
日本とは勝手が違う!? | アメリカ展示会の搬入・設営ルールを実例解説
アメリカの展示会運営には、日本とは大きく異なる点が数多く存在します。特に、展示会準備や撤収のルール・工程は、初めての出展企業にとって驚くほど勝手が違います。
今回は、ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)の周辺や会場内の風景を例に、現地の実務をわかりやすくご紹介します。
1. 展示会場周辺に積まれる大量のコンテナとパレット
ラスベガスコンベンションセンター(LVCC)屋外の様子
ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)の周囲では、展示会前後になると、大小無数のコンテナやパレットが会場外にぎっしりと並べられます。出展企業が事前に送った什器や装飾資材が一斉に搬入されるため、その光景はまるで大型物流倉庫のようです。
中には、日本ではまず見かけないようなサイズ・量の資材が所狭しと積まれ、一目で「規模の違い」を実感できる迫力があります。


大型資材の集中搬入・撤収
展示会の準備期間になると、フォークリフトや専門業者が次々と登場し、これらの資材を短時間で一気に会場内へ搬入していきます。撤収作業も同様で、終了直後から即座に解体・運び出しが始まり、会場がみるみる空になっていく様子はまさにアメリカらしい“スピード勝負”の現場です。
アメリカの展示会では実店舗のような規模感の巨大ブースもあるため、日本の展示会のように、出展者が小さな台車で少しずつ資材を運び込む…といった手作業の光景とは根本的に異なり、ダイナミックな進行が求められます。


2. アメリカの展示会「事前準備」が早い理由
設営スケジュールの圧倒的なスピード感
アメリカでは、日本と比べて展示会準備に割ける時間が非常に限られていることが多く、設営作業は「搬入日1日限定」や「展示会当日にすべて完了」といった、タイトなスケジュールで進められます。
このため、商品や什器、ブース資材を格納したコンテナやパレットが、あらかじめ展示会主催者や指定倉庫のスケジュールに沿って、期日までに会場周辺へ届いていなければ、設営そのものが不可能になるリスクがあります。
日本の展示会のように「少しずつ持ち込む」や「当日に一部調達」といった対応は、アメリカの現場では通用しません。
全てを事前に整えておくことが必須です。
指定業者と労働組合による集中作業
アメリカの展示会では、搬入・設営作業の大半が会場指定の業者やユニオンによって行われます。
安全面や契約上の理由から、出展者自身が自由に作業を行うことは原則として認められていません。会場内では作業領域が細かく分担されており、日本の展示会に慣れた方にとっては「想像以上に関われる範囲が限られている」と感じることも多いでしょう。
中でも、什器や装飾物などの重量資材の運搬や設営作業は完全に専門業者の仕事。
ブース施工期間も限られているため、事前に全資材を会場周辺に集約し、決められたタイミングで一気に搬入するという流れが徹底されています。
指定の業者で高い金額を支払わずにルール内で自社で設営する方法もありますので、追ってご紹介いたします。
**写真では分かりづらいかもしれませんが、実際の会場では視界の奥まで業者が並ぶほどの長大な空間が連続しています。この規模を短時間で処理するには、熟練の専門業者による集中作業以外に方法がありません。**

3. 作業車が行き交う空間で求められる高度な安全配慮
「事故のリスク」と「保険」の問題
LVCCのようなアメリカの巨大展示会場では、フォークリフトや高所作業車などの重機が頻繁に往来します。
パレットに積まれた什器や装飾部材は数百キロ単位の重量物であることも少なくなく、一般出展者が不用意に作業に関与すること自体が事故などの大きなリスクになります。
加えて、アメリカでは訴訟や保険の制度が非常に厳格です。
展示会主催者や会場側は、少しでも事故を防ぎたいため、搬入・搬出は指定業者以外が勝手に行うことを厳しく制限しています。
4. 「台車の持ち込み禁止」にも合理的な理由がある
初めてアメリカの展示会に参加された日本企業は驚かれた経験もあられると思いますが、日本の展示会ではよく見られる、出展者自身による台車を使った搬入も、アメリカでは基本的に禁止されることが多いです。
このルールには明確な理由があります:
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事故防止の観点:
会場内では、フォークリフトや大型機材が動き回っており、そこに不慣れな来場者が台車を押して入ると、接触事故のリスクが一気に高まります。
事故を未然に防ぐための措置として、制限が設けられています。 -
労働組合との取り決め:
アメリカの展示会場では、ユニオンが運搬作業を独占的に担うルールがあります。
出展者が勝手に台車を使って搬入すると、ユニオンとの契約に違反する可能性があります。 -
保険の適用範囲:
仮に出展者が自分で台車を使って作業中に事故を起こした場合、保険が適用されないケースがあり、主催者側・会場側ともにリスクが大きいです。
出展者の中には「台車禁止なんて非効率」と感じる方もいるかもしれませんが、こうした背景を理解すると、主催者側が決めるルールにも納得がいくはずです。
何かを台車で持ち込もうとすると、もちろんセキュリティーに止められるので、注意が必要です。
5. アメリカ展示会準備で押さえるべき4つの基本
アメリカの展示会は、とにかくスピードと安全性が最優先。日本とは異なる運営体制やルールが数多く存在します。
アメリカの展示準備と日本の違いまとめ:
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搬入スケジュールがタイト
展示会前日に一斉に資材を搬入するスタイルが主流で、事前にすべてを準備していないと対応できません。 -
重量物が多く、事故リスクが高い
フォークリフトや高所作業車が行き交う現場では、安全確保のために業者による集中作業が原則です。 -
保険と訴訟リスク
万が一事故が起きた場合、高額な賠償リスクが発生する可能性があり、個人での作業や台車の使用は禁止されています。 -
ユニオンとの契約・労働慣行
各会場には指定業者・ユニオンが存在し、出展者による搬入作業は契約上制限されています。
アメリカの展示会では「スピードと安全の最適化」が徹底されています。
こうした前提を理解しないまま日本式の感覚で準備を進めると、現地で対応できない事態に陥ることもあります。だからこそ、アメリカ特有のルールに合わせた計画と、早めの準備・現地調整が欠かせません。
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アメリカの展示会は、日本とは準備や進行のルールが大きく異なります。最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、事前にポイントを理解し、正しい手順で進めれば、初出展でも十分に対応可能です。
MCECでは、現地ルールの確認から、事前準備、展示会場での対応、展示会後のフォローアップまで、展示会出展に関わるすべての工程を包括的にサポートします。
アメリカ展示会の準備でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。