米国進出ノウハウと展示会実務ガイド

アメリカ展示会のブース設営と撤収ルール
アメリカの展示会に初めて出展される企業にとって、日本との違いに戸惑う場面は少なくありません。特に、設営・撤収に関するルールは大きく異なり、事前に把握しておかなければ、現場で想定外のトラブルに見舞われるリスクもあります。 本記事では、アメリカの展示会で設営・撤収を行う際に知っておくべきポイントをご紹介します。 台車持ち込みNG|持ち込める荷物の制限に注意 アメリカの展示会では、出展者が自らブースに荷物を搬入できる量には厳しい制限があります。原則として「手持ち」または「スーツケースで持ち込める程度」の荷物に限られており、それ以上の荷物は、主催者が指定する業者(General Contractor)による搬入が義務づけられています。 日本の展示会ではよく見かける台車の使用も禁止されています(事故防止・保険の都合)。 荷物は指定の場所へ事前搬送 荷物や備品は、展示会場とは別の指定された場所(Advanced Warehouse)へ事前搬送します。展示会当日、これらの荷物は、指定業者の手配によりブースまで配達される仕組みになっています。 実際の現場では、取り扱いが荒いこともあり、弊社でも過去にパレットが破損して届いたケースがありました。こうした場合は、展示会場内の「出展者サービスデスク」に、その場でクレームを申し出ることで、代替品の提供などの対応を受けることが可能です。 パレットでの輸送は破損のリスクが高いため、精密機器や大型の什器などは、より頑丈な「クレート(木箱)」が選ばれることもあります。 指定業者とは|役割と確認方法 アメリカの展示会では、設営・撤収作業の大半を行えるのは主催者が指定した業者(General Contractor)に限られています。 これら指定業者の情報は、展示会の公式HPの「Exhibitor Manual(出展者マニュアル)」に記載されていることが多いです。このマニュアルには、出展者が遵守すべき規則や手続き、指定業者のリストや連絡先も含まれているため、出展前には必ず確認しておく必要があります。 自分たちで設営する場合は、脚立が使用出来ず、ドライバーなどの小さい工具は良いのですが、その他の大がかりな組み立てに必要な工具の使用も禁止されています。そのため、高所作業や重量物の取り付けを行う場合は、必ず指定業者に依頼する必要があります。 撤収時も“手荷物以外は業者対応” 撤収においても搬入時と同様の制限があります。ブース内の展示品や什器のうち、手荷物で持ち運べるもの以外は出展者が搬出することはできません。すべての資材を再びパレットやクレートにまとめ、指定業者によって会場から搬出される必要があります。 この搬出後、荷物は事前に手配したトラック業者や運送会社を通じて、出展企業の拠点へ返送されるという流れです。 破損リスクは常に想定内に 日本と比べて、アメリカでは展示資材の取り扱いが粗雑なこともあります。 弊社でも、過去に何度も大型スクリーンが破損して返送された経験があり、実感として50%程度の確率で何らかの破損が発生している印象です。 そのため、特に壊れやすい資材を輸送する際は、十分な梱包対策を施すなどの備えが重要です。 2025年1月に出展した際は、珍しく全く破損のない状態で弊社倉庫まで荷物が戻ってきました。これが「普通」ではなく「ラッキー」と感じてしまうあたり、アメリカ展示会ならではの事情かもしれません。 安心して設営・撤収を進めるために...
アメリカ展示会のブース設営と撤収ルール
アメリカの展示会に初めて出展される企業にとって、日本との違いに戸惑う場面は少なくありません。特に、設営・撤収に関するルールは大きく異なり、事前に把握しておかなければ、現場で想定外のトラブルに見舞われるリスクもあります。 本記事では、アメリカの展示会で設営・撤収を行う際に知っておくべきポイントをご紹介します。 台車持ち込みNG|持ち込める荷物の制限に注意 アメリカの展示会では、出展者が自らブースに荷物を搬入できる量には厳しい制限があります。原則として「手持ち」または「スーツケースで持ち込める程度」の荷物に限られており、それ以上の荷物は、主催者が指定する業者(General Contractor)による搬入が義務づけられています。 日本の展示会ではよく見かける台車の使用も禁止されています(事故防止・保険の都合)。 荷物は指定の場所へ事前搬送 荷物や備品は、展示会場とは別の指定された場所(Advanced Warehouse)へ事前搬送します。展示会当日、これらの荷物は、指定業者の手配によりブースまで配達される仕組みになっています。 実際の現場では、取り扱いが荒いこともあり、弊社でも過去にパレットが破損して届いたケースがありました。こうした場合は、展示会場内の「出展者サービスデスク」に、その場でクレームを申し出ることで、代替品の提供などの対応を受けることが可能です。 パレットでの輸送は破損のリスクが高いため、精密機器や大型の什器などは、より頑丈な「クレート(木箱)」が選ばれることもあります。 指定業者とは|役割と確認方法 アメリカの展示会では、設営・撤収作業の大半を行えるのは主催者が指定した業者(General Contractor)に限られています。 これら指定業者の情報は、展示会の公式HPの「Exhibitor Manual(出展者マニュアル)」に記載されていることが多いです。このマニュアルには、出展者が遵守すべき規則や手続き、指定業者のリストや連絡先も含まれているため、出展前には必ず確認しておく必要があります。 自分たちで設営する場合は、脚立が使用出来ず、ドライバーなどの小さい工具は良いのですが、その他の大がかりな組み立てに必要な工具の使用も禁止されています。そのため、高所作業や重量物の取り付けを行う場合は、必ず指定業者に依頼する必要があります。 撤収時も“手荷物以外は業者対応” 撤収においても搬入時と同様の制限があります。ブース内の展示品や什器のうち、手荷物で持ち運べるもの以外は出展者が搬出することはできません。すべての資材を再びパレットやクレートにまとめ、指定業者によって会場から搬出される必要があります。 この搬出後、荷物は事前に手配したトラック業者や運送会社を通じて、出展企業の拠点へ返送されるという流れです。 破損リスクは常に想定内に 日本と比べて、アメリカでは展示資材の取り扱いが粗雑なこともあります。 弊社でも、過去に何度も大型スクリーンが破損して返送された経験があり、実感として50%程度の確率で何らかの破損が発生している印象です。 そのため、特に壊れやすい資材を輸送する際は、十分な梱包対策を施すなどの備えが重要です。 2025年1月に出展した際は、珍しく全く破損のない状態で弊社倉庫まで荷物が戻ってきました。これが「普通」ではなく「ラッキー」と感じてしまうあたり、アメリカ展示会ならではの事情かもしれません。 安心して設営・撤収を進めるために...

日本とは勝手が違う!? | アメリカ展示会の搬入・設営ルールを実例解説
アメリカの展示会運営には、日本とは大きく異なる点が数多く存在します。特に、展示会準備や撤収のルール・工程は、初めての出展企業にとって驚くほど勝手が違います。 今回は、ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)の周辺や会場内の風景を例に、現地の実務をわかりやすくご紹介します。 1. 展示会場周辺に積まれる大量のコンテナとパレット ラスベガスコンベンションセンター(LVCC)屋外の様子 ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)の周囲では、展示会前後になると、大小無数のコンテナやパレットが会場外にぎっしりと並べられます。出展企業が事前に送った什器や装飾資材が一斉に搬入されるため、その光景はまるで大型物流倉庫のようです。 中には、日本ではまず見かけないようなサイズ・量の資材が所狭しと積まれ、一目で「規模の違い」を実感できる迫力があります。 大型資材の集中搬入・撤収 展示会の準備期間になると、フォークリフトや専門業者が次々と登場し、これらの資材を短時間で一気に会場内へ搬入していきます。撤収作業も同様で、終了直後から即座に解体・運び出しが始まり、会場がみるみる空になっていく様子はまさにアメリカらしい“スピード勝負”の現場です。 アメリカの展示会では実店舗のような規模感の巨大ブースもあるため、日本の展示会のように、出展者が小さな台車で少しずつ資材を運び込む…といった手作業の光景とは根本的に異なり、ダイナミックな進行が求められます。 2. アメリカの展示会「事前準備」が早い理由 設営スケジュールの圧倒的なスピード感 アメリカでは、日本と比べて展示会準備に割ける時間が非常に限られていることが多く、設営作業は「搬入日1日限定」や「展示会当日にすべて完了」といった、タイトなスケジュールで進められます。 このため、商品や什器、ブース資材を格納したコンテナやパレットが、あらかじめ展示会主催者や指定倉庫のスケジュールに沿って、期日までに会場周辺へ届いていなければ、設営そのものが不可能になるリスクがあります。 日本の展示会のように「少しずつ持ち込む」や「当日に一部調達」といった対応は、アメリカの現場では通用しません。全てを事前に整えておくことが必須です。 指定業者と労働組合による集中作業 アメリカの展示会では、搬入・設営作業の大半が会場指定の業者やユニオンによって行われます。安全面や契約上の理由から、出展者自身が自由に作業を行うことは原則として認められていません。会場内では作業領域が細かく分担されており、日本の展示会に慣れた方にとっては「想像以上に関われる範囲が限られている」と感じることも多いでしょう。 中でも、什器や装飾物などの重量資材の運搬や設営作業は完全に専門業者の仕事。ブース施工期間も限られているため、事前に全資材を会場周辺に集約し、決められたタイミングで一気に搬入するという流れが徹底されています。 指定の業者で高い金額を支払わずにルール内で自社で設営する方法もありますので、追ってご紹介いたします。 **写真では分かりづらいかもしれませんが、実際の会場では視界の奥まで業者が並ぶほどの長大な空間が連続しています。この規模を短時間で処理するには、熟練の専門業者による集中作業以外に方法がありません。** 3. 作業車が行き交う空間で求められる高度な安全配慮 「事故のリスク」と「保険」の問題 LVCCのようなアメリカの巨大展示会場では、フォークリフトや高所作業車などの重機が頻繁に往来します。パレットに積まれた什器や装飾部材は数百キロ単位の重量物であることも少なくなく、一般出展者が不用意に作業に関与すること自体が事故などの大きなリスクになります。...
日本とは勝手が違う!? | アメリカ展示会の搬入・設営ルールを実例解説
アメリカの展示会運営には、日本とは大きく異なる点が数多く存在します。特に、展示会準備や撤収のルール・工程は、初めての出展企業にとって驚くほど勝手が違います。 今回は、ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)の周辺や会場内の風景を例に、現地の実務をわかりやすくご紹介します。 1. 展示会場周辺に積まれる大量のコンテナとパレット ラスベガスコンベンションセンター(LVCC)屋外の様子 ラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)の周囲では、展示会前後になると、大小無数のコンテナやパレットが会場外にぎっしりと並べられます。出展企業が事前に送った什器や装飾資材が一斉に搬入されるため、その光景はまるで大型物流倉庫のようです。 中には、日本ではまず見かけないようなサイズ・量の資材が所狭しと積まれ、一目で「規模の違い」を実感できる迫力があります。 大型資材の集中搬入・撤収 展示会の準備期間になると、フォークリフトや専門業者が次々と登場し、これらの資材を短時間で一気に会場内へ搬入していきます。撤収作業も同様で、終了直後から即座に解体・運び出しが始まり、会場がみるみる空になっていく様子はまさにアメリカらしい“スピード勝負”の現場です。 アメリカの展示会では実店舗のような規模感の巨大ブースもあるため、日本の展示会のように、出展者が小さな台車で少しずつ資材を運び込む…といった手作業の光景とは根本的に異なり、ダイナミックな進行が求められます。 2. アメリカの展示会「事前準備」が早い理由 設営スケジュールの圧倒的なスピード感 アメリカでは、日本と比べて展示会準備に割ける時間が非常に限られていることが多く、設営作業は「搬入日1日限定」や「展示会当日にすべて完了」といった、タイトなスケジュールで進められます。 このため、商品や什器、ブース資材を格納したコンテナやパレットが、あらかじめ展示会主催者や指定倉庫のスケジュールに沿って、期日までに会場周辺へ届いていなければ、設営そのものが不可能になるリスクがあります。 日本の展示会のように「少しずつ持ち込む」や「当日に一部調達」といった対応は、アメリカの現場では通用しません。全てを事前に整えておくことが必須です。 指定業者と労働組合による集中作業 アメリカの展示会では、搬入・設営作業の大半が会場指定の業者やユニオンによって行われます。安全面や契約上の理由から、出展者自身が自由に作業を行うことは原則として認められていません。会場内では作業領域が細かく分担されており、日本の展示会に慣れた方にとっては「想像以上に関われる範囲が限られている」と感じることも多いでしょう。 中でも、什器や装飾物などの重量資材の運搬や設営作業は完全に専門業者の仕事。ブース施工期間も限られているため、事前に全資材を会場周辺に集約し、決められたタイミングで一気に搬入するという流れが徹底されています。 指定の業者で高い金額を支払わずにルール内で自社で設営する方法もありますので、追ってご紹介いたします。 **写真では分かりづらいかもしれませんが、実際の会場では視界の奥まで業者が並ぶほどの長大な空間が連続しています。この規模を短時間で処理するには、熟練の専門業者による集中作業以外に方法がありません。** 3. 作業車が行き交う空間で求められる高度な安全配慮 「事故のリスク」と「保険」の問題 LVCCのようなアメリカの巨大展示会場では、フォークリフトや高所作業車などの重機が頻繁に往来します。パレットに積まれた什器や装飾部材は数百キロ単位の重量物であることも少なくなく、一般出展者が不用意に作業に関与すること自体が事故などの大きなリスクになります。...