TJ Maxxの外観

アメリカのオフプライスショップ【TJ Maxx】とは?~商品棚から見える、本当は知りたくない日本製品の立ち位置~

アメリカに住んでいる方であれば、一度は足を運んだことがあるであろうTJ Maxx。ブランド品が手ごろな価格で手に入る“宝探し型ショッピング”の代表的な存在です。しかし、このTJ Maxxをじっくり観察してみると、単なるお得ショップではないことに気づかされます。

特に注目したいのは、店内で展開されている日韓ブランドの存在感の差です。その背景には、TJ Maxxを展開する親会社「TJX Companies」の歴史と、他に類を見ないビジネス戦略が深く関係しています。

 

 

米国最大手のオフプライスチェーン、TJX Companiesとは何者か?

TJ Maxxを展開するTJX Companiesは、2024年度時点で世界に約4,900店舗を展開し、売上は5兆円を超える巨大企業です。もともとは1950年代に誕生したディスカウント百貨店「Zayre」の一部門としてスタートしましたが、オフプライス業態の収益性に着目し、1987年に独立しました。

その後、MarshallsやHomeGoods、カナダのWinnersなどを次々と買収し、現在では北米およびヨーロッパでオフプライスリテールのトップ企業として君臨しています。

TJXの最大の特徴は、常に変化する商品ラインナップと、それを支える柔軟で俊敏な調達ネットワークです。1,000社以上のブランドやメーカーと日々交渉を行い、余剰在庫やシーズンオフの商品を仕入れ、独自の物流網によって全米の店舗へ迅速に供給しています。この「Buy Fast, Turn Fast(素早く仕入れ、素早く売る)」という哲学こそが、TJXのビジネスモデルの中心を担っています。

TJ Maxxでは全ての店舗が同じ商品を取り扱っているわけではありません。また、店舗ごとに週に数回入荷を行うことで常に消費者に新鮮さを提供し、日本のドン・キホーテに似た「掘り出し物」感覚が特徴であると言えます。

TJ Maxxで販売されているアパレル商品

 

 

店内で浮き彫りになる日韓ブランドの存在感の差

実際にTJ Maxxの店舗を歩いてみると、商品ごとに“国の存在感”が如実に表れています。まず目を引くのは、棚の端(エンド)に大きく展開されている韓国のスキンケアやK-ファッションブランドです。人気のクッションファンデーションやフェイスパックが色とりどりに並び、英語と韓国語が併記されたパッケージが消費者の目を引きます。

一方、日本ブランドの商品も決して質が劣っているわけではありません。しかし、多くの場合、陳列棚の下段やワゴンの隅など、目立たない場所に置かれており、なかなか目につきにくいのが現状です。「Made in Japan」「高品質」と表記されていても、控えめなデザインや説明の少ないパッケージでは、アメリカの消費者にはその価値が伝わりづらいのです。つまり、商品力はあっても、売り場での“語りかける力”が不足していると言えます。

目立つ棚に置かれる韓国製品に対し、

TJ Maxxの目立つ棚で販売されている韓国製品
TJ Maxxの目立つ棚で販売されている韓国製品

足元に追いやられる日本製品

TJ Maxxの商品棚の足元で販売されている日本製品

 

 

なぜ韓国ブランドは前面に出て、日本ブランドは埋もれるのか?

オフプライスストアでこれだけ韓国製品があるということは、もともとそれ以上にアメリカの通常小売店に韓国製品が多く流通しているということに他ならないです。TJ Maxxは“売れ残り”を扱う店だが、そこに多く並んでいるということは、それだけ出回っている証拠でもあります。

逆に、日本製品はどうでしょう。ディスカウントストアですらほとんど見かけず、見つけても棚の下段です。それが何を意味しているかは、言うまでもないです。

もちろん、日本製品には今も変わらぬ魅力や品質の高さがあります。しかし、どれだけ流通しているか、どれだけ目立っているか、という現場のリアルを見ると、少なくともアメリカ市場での存在感は、今や韓国製品の後塵を拝していると言わざるを得ないのかなと感じました。

「TJ Maxxで見た棚の位置」
それは偶然ではなく、今の立ち位置を如実に映し出していました。

 

 

TJXが求める“売れる商品”とは?

TJ Maxxのバイヤーは、単なる安売り品ではなく、「回転率」と「見た目での訴求力」の両方を重視して商品を選定しています。売れる商品には、以下のような共通点があります:

  • 値頃感が明確に伝わる値札
     例:「元値$45 → 販売価格$14.99」など、得した感覚が一目で伝わる表示。
  • パッケージに「原産国」「特徴」「効果」が即伝わる
     3秒で理解できるシンプルなメッセージと視認性の高いデザイン。
  • SNS・口コミと連動できる“話題性”
     インフルエンサーが紹介しやすい構成や名称、視覚的に映えるパッケージ。

これらの条件を満たしていない商品は、たとえ品質が優れていても「売れる絵が見えない」と判断され、店頭に並ぶ機会を逃してしまいます。

TJ Maxxのレジカウンターと付近の売り場

 

 

おわりに:TJ Maxxの棚は、世界市場の縮図である

TJ Maxxの売り場は、単なる小売店舗ではありません。そこにはグローバルブランド同士の競争と、消費者心理の最前線が凝縮されています。棚の配置や値札の表現一つをとっても、それがマーケティングの成否を物語っているのです。

韓国ブランドの台頭は、現地市場を徹底的に研究し、売り方を最適化した結果にほかなりません。日本ブランドもまた、品質にこだわるだけでなく、それを「伝える力」を磨くことができれば、再び棚の中心を担う日は遠くないはずです。TJ Maxxは、そうした挑戦を受け入れてくれる、数少ない貴重なフィールドなのです。

TJ Maxxのお菓子売り場

 

 

弊社サービス

弊社は25年以上アメリカでビジネスを行って参りました。その経験をもとに多くの日本企業のアメリカ市場進出サポートも行っております。
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